新連載!


文●高石ゆみ YumiTakaishi 美術ライター


                              
旧連載 国立新美術館とは何か? 藤田一人
                                
2003年5月〜2004年2月


                     ⇒  関連記事 『ザ・ゲート(門)、ニューヨーク、セントラル・パークのためのプロジェクト』 2003年8月
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第5回(最終回) 3月23日
■26年間に渡った夢の実現に市民も集まる

 2月12日、摩天楼をバックにした景観が楽しめる、セントラルパークの中でも特に人気のあるスポット、シープスメドー広場周辺には、まだ夜も空けきらぬ暗いうちから、多くの報道陣そしてニューヨーク市民、旅行者が集まってきた。氷点下の寒さの中で人々が待ちわびているのは、クリストとジャンヌ=クロードの登場……この場所で、2人のアーティストとプロジェクトを積極的に後押ししてきたブルームバーグ、ニューヨーク市長が何本かの“ゲート”を開くことになっていたのだ。

 市長サイドからの提案で行われることになったこの“イベント”。当初は報道関係者そして一部の関係者のみに公開を予定していたが、その噂を聞いた市民からの問い合わせに応じて一般観客のためのスペースも用意された。

 8時半過ぎに、市長とともにこの場所に現れたクリストとジャンヌ=クロード、満願の笑みを浮かべて観客からの拍手に応え、市長が長い棒を使って何本かのゲートの布を開いてゆく作業を手伝った。それと同時に、59丁目から110丁目、5番街から8番街のあいだに分散して待機していた73の作業チームが一斉に布を開く作業を開始……クリストとジャンヌ=クロードの26年来の夢の実現が最終段階を迎えた。


「クリスト(右)とジャンヌ=クロード(左)」
photo: Wolfgang Volz

クリスト&ジャンヌ=クロード
『ザ・ゲート』への道のり
文●高石ゆみ YumiTakaishi 
美術ライター







■600人強で15000基の台座にゲートを設置

 1月を通して設置された15000基の台座の上にゲートを設置する作業が始まったのは、2月7日。アメリカ各地、それにカナダやヨーロッパ、南米などからの参加者も含めた600人強の作業者が73のチームに分かれ、公園の全域に散らばって作業が続けられた。合法的にアメリカで働けることが条件になっていたことから、日本からの作業参加はほぼ不可能だったが、アメリカ在住の日本人、数名も作業チームに加わっていたという。

 垂直支柱と丸められた布が取り付けられた水平柱を接続し組み立てられたゲートを、鉄製台座の上に取り付けられた水平プレートに取り付けていくという作業のテンポは、日一日と速まってゆき、金曜日の朝には全てのゲートが、布を巻き上げた状態で立ち上がり、翌朝のオープンを待つことになった。

 1月、徐々に設置されていく台座をみたとき、ゲートが付かなくても、もう台座だけでも、ウォルター・デ・マリアやカール・アンドレを連想させる“立派”な芸術作品だ、と感じたが、立ち上がったゲートの連なりに大満足のジャンヌ=クロードは、「もう、布を下げる必要がない!」というジョークまで発していた。
  
「多くの人の作業によってプロジェクトは完成へと向った」
photo: Wolfgang Volz


クリスト&ジャンヌ=クロード
『ザ・ゲート』への道のり
文●高石ゆみ YumiTakaishi 
美術ライター








■どんな天候でも魅力を放つ

 12日、午後2時過ぎ、すべてのゲートの布が開かれ、『ゲーツ、ニューヨーク市セントラルパーク、1979−2005』が完成した。

 この日の天候はほぼ快晴、強すぎない程度の風が常にふいているというこの作品を鑑賞するにはもってこいの天候だった。布地のサフラン色は、日差しの当たりかたに応じてその色合いを変化させていた。また風は布地の形をあるときは繊細に、あるときはダイナミックに動かしていたが、隣り合ったゲートであっても、その布の動きは大きく異なることもあった。その動きを眺めるとき、なぜクリストとジャンヌ=クロードが、布という素材にこだわり続けてきているのかに、改めて納得させられた。また展示期間3日目に降った雨は、濡れた布の重厚感ある色調を楽しませてくれるものだったし、2回に渡って降った雪の中に立ち並ぶゲートは、想像を絶する美しさだった。

 2月27日の展示最終日までの16日間、クリストとジャンヌ=クロードは、まだ暗いうちからセントラルパークに到着し、作業者へのスピーチ、テレビや新聞のインタビュー、世界中から訪れた親しい友人への挨拶などをはさみはしたものの、夕方過ぎ、暗くなるまでのあいだ車で公園内を回り、気に入った場所では車から降りてゲートの鑑賞を続けていた。
   
「風に舞うサフランの布」
 photo: Wolfgang Volz

  
「上空から見た様子。天気によって作品の見え方が大きく違う」
  photo: Wolfgang Volz



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