新連載!


文●高石ゆみ YumiTakaishi 美術ライター


                              
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2003年5月〜2004年2月


                     ⇒  関連記事 『ザ・ゲート(門)、ニューヨーク、セントラル・パークのためのプロジェクト』 2003年8月
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第3回 10月14日
■ドローイングの変化が示すプロジェクトの成長

 7月末で終わったメトロポリタン美術館でのゲート展は、このプロジェクトが実現されるその「場所」と隣あった会場で開かれたこともあり、ニューヨーク市民、美術ファンのプロジェクトへの期待をより大きくしたようだ。クリストとジャンヌ=クロードのへの問い合わせや、ファン・レター、またプロジェクトの設置、管理作業への参加申し込みも、4月以降かなり増えたという。

 70年代末からつい最近までのドキュメント写真やゲート、台座、布の実物サンプルなどを含め、この展覧会を単なる「美術作品展」ではなく、プロジェクトの「予告展」とした構成も、より多くの人々の関心を集めることになったのかもしれない。しかし、展覧会の見所は、やはりクリストによって「描き込まれた」ドローイング作品群だろう。

 展覧会には1979年から2004年までに描かれたドローイング作品、約50点が展示されている。小さなものは約20x30センチ、大きなものは長辺が約2.5メートルのものまである。もちろん、その全てがセントラルパークの何処かの場所に設置されたゲートの連なりを描いたものではあるが、年代順に並べられた作品を見ていくと、クリストとジャンヌ=クロード、2人のアーティストの中で、プロジェクトに対するアイデアがどのように育ってきたかを辿ることもできる。

 会場の入り口付近には、他の作品とは少し離れて、きわめて初期の2作品が並べられていた。1点は約28x36センチ(写真1)、もう一点は71x56センチ(写真2)のともに小さめの作品だ。前者は、10基のゲートが設置された道を描いただけのもので、何の背景もない簡単なスケッチだ。タイトルは『1000のゲート』、79年に描かれたこの作品には、セントラルパークの名前は付けられていない。道を跨いで、無数のゲートを設置し、揺れ動く布の下を人々が歩けるようにしてみたい。そんな、生まれたてのアイデアを紙のうえに表現した作品だろう。ちなみに、この作品上に書き込まれたゲートの高さは12フィート、来年、実際に設置されるゲートよりは4フィートも低いものだ。

 続いての一枚、71x56センチのものは、80年に描かれたもの。この作品はセントラルパークの景観が描かれ、また、タイトルにもセントラルパークと明記されている。つまり、このプロジェクトはアイデアが生まれてからそれほどの間をあけずにセントラルパークを実行地と決められたわけだ。しかし、この作品の中のゲートの布はなんと白色、また支柱の色は黒。このようなドローイングはこれ1枚だけなのか、或いは他の色で描いた作品もあるのか……気になるところだ。

 これら2枚の作品を出発点に展示作品を見ていくと、布の色が次第に暖かみを増してゆき、支柱が次第にがっしりと太くなってきたことがわかる。クリストは常々、「描くことを通して、プロジェクトに対する考えを発展させ、クリスタライズする」と語ってきているが、約50点もの作品を纏めて見ることのできる今回の展示は、その言葉の意味するところを実にわかりやすく見せてくれるものだ。

"The Thousand Gates Project" Drawing, 1979
(c)Christo
 写真1


クリスト&ジャンヌ=クロード
『ザ・ゲート』への道のり
文●高石ゆみ YumiTakaishi 
美術ライター



"The Gates, Project for 11,000 gates in Central Park, New York City" Collage, 1980
(c)Christo
写真2



■プロジェクトの資金源としてのドローイング

 クリストとジャンヌ=クロードのプロジェクトにおいて、これらのドローイング作品には、もうひとつ大きな役割がある。プロジェクトを実現するための資金源だ。レクチャーやインタビューで彼らが常に強調するように、これまでのプロジェクトの場合と同様、今回のゲート・プロジェクトも寄付や援助にたよることなく、全資金はクリストとジャンヌ=クロード自身が捻出する。おそらく2000万ドル(22億円)位になるであろうその費用はすべて、クリストの作品によって賄われるのだ。たとえば、『ザ・ゲート』のドローイング類は、小さなものでも数万ドル、大きなものでは、数十万ドルの値段がつけられているが、購入、収集を希望する世界各国の美術館、コレクター、そしてディーラーは後を絶たないという。

 クリストが現代美術の世界でも、たぐい希なドローイングの力をもっていることは、周知のとおりだが、彼はアシスタントを使うことなく、作品を額縁にいれるまでも全て一人で行っているという。また、プロジェクトはクリストとジャンヌ=クロード、2人の共同作品であるが、ドローイング作品の制作にジャンヌ=クロードが関わることはなく、それらはクリスト一人の作品であり、クリスト一人のサインが入れられている。

 展覧会の後半部分には、ここ1、2年にあいだに描かれた作品が並べられている。80年代の作品にはなかった、台座も描かれ、ゲートの高さや支柱の太さ、布の色、そして設置される場所も、実現したさいのそれにかなり正確に即し、サンプルの布地や設置位置が記された地図、青写真なども添えられた、これら近作は来年2月の実現への期待を大きく膨らませるものだ。

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