web展評
new2006.5.29
 web展評 目次

第24回上野の森美術館大賞展
作家の視展2006年



画家が選ぶがゆえに選ばれる作品

文●松浦良介
Ryosuke Matsuura 「てんぴょう」編集長
〈第24回上野の森美術館大賞展〉
4月22日〜5月3日
〈作家の視展2006年〉
5月10日〜15日
東京・上野の森美術館
台東区上野公園1-2


 審査員が全員画家、というスタイルで回を重ねてきた本展も24回を迎えた。今回は930人・1455点の応募があり、259人・259点が入選。受賞および入選作品展が、4月22日〜5月3日東京・上野の森美術館で開催された。審査にあたったのは、宇佐美圭司、絹谷幸二、小嶋悠司、手塚雄二、櫃田伸也、日野耕之祐の六氏。

 上野の森美術館絵画大賞には、わたなべみわこ『冬々雨々(ふゆふゆあめあめ)』が選ばれた。ほか優秀賞には、長友紀子『Landscape01』、齋籐光晴『水奏』、若見優貴『冬』、渡邉野子『観察者‐身体の遠近法』、大島信人『On the Terrace』。
上野の森美術館絵画大賞
わたなべみわこ
「冬々雨々」

 また5月10日〜15日同館で、今までの同展受賞者が近作・新作を発表する〈作家の視展2006〉も開催された。延べ211名の受賞者のうち64名が出品した。


 画家が画家を審査する、といえば公募団体展がすぐに浮かぶが、この公募にも多くの公募団体展の画家が応募してきている。個人的には、どちらかといえば新人よりも中堅の画家を評する印象も強い。

 しかし今回は受賞者6名のうち4名が、賞候補18名のうち5名が1970〜80年代の生まれ。しかも初出品で、受賞というケースもあったそうだ。また審査員の日野氏の審査コメント“個をつくっていくこと”において「これは今年にかぎった感想ではないが、一見怪奇な絵が増えた。怪奇といってもシュール的な超現実の、心象風景というよりも、漫画的で、劇画みたいな絵がふえた」とあるが、これはここ数年映像的表現と同じく主流をなしてきたあえて漫画・イラストの影響を全面に出す絵画のことを指摘しているのだと思う。この流れは主に若い画家に見られるものなので、出品者にもその世代が増えてきているのであろう。

優秀賞 彫刻の森美術館賞
長友紀子
「Landscape 01」

 今回両展をあわせて見ることによって、評論家でなく画家が審査員であることによって光があたる作品があることが改めてわかった。

 まずはその時々の流行を反映した作品ではなく、個々の作風を深めていく作品。派手さはないが、破綻も無い手堅い作品とも言える。主に公募団体展を活動の中心においている画家に多い。目まぐるしくかわる美術の流行にへたに左右されずに、自分のペースで制作できるのが公募団体展のいい点であるのだが、その反映ともいえる。〈作家の視展〉の出品作は、そのような作品が多数見受けられた。

 その次に、描きたいものを描く、という初期衝動が強く感じられる作品。前者と同じくそこには現代の空気、美術の流行といったものは余りないのだが、美術に限らず作品制作全てにおいて重要な、描きたいという衝動が強くあるのだ。むしろ前述したような要素がない分、その強さは余計に大きく感じられる。

 今回大賞を受賞したわたなべみわこ『冬々雨々(ふゆふゆあめあめ)』、優秀賞受賞の長友紀子『Landscape01』は、まさにそのような作品である。

 大賞受賞のわたなべの作品は、自分の部屋を座った視点で描いた作品。オーソドックスな日本画の表現なのだが、それが自分の日常を過剰に美化も卑下もしない画家の姿勢を感じさせるものへとつながり好感が持てる。“日常”というものをテーマにした作品は多いのだが、どうしても作品にするときに無理が生じて非日常的なものになってしまう。優秀賞受賞の若見優貴「冬」も、言葉で説明してしまえば、冬の公園の風景を描いただけの作品なのだが、わたなべに共通する強さを感じさせた。

 長友の作品は、鉛筆画。受賞コメントに「私が鉛筆で線を描くのは、なにもないところに線を引くことで意味が生まれてくるから」とある。タイトルは訳せば風景だが、これは単に線を自由に描くことによって生まれた結果に過ぎない。例えばまっさらな紙に線が引かれれば、そこに意味や形が生まれる。そういった絵画の原初的快楽を愉しむ画家の感情が伝わり、観る側も同じように何かイメージが生まれる瞬間に立ち会える作品だ。
優秀賞 フジテレビ賞
若見優貴
「冬」
 両作品共に、美術の潮流や流行を重んじてしまうコンクールであれば受賞はできなかったかもしれない。だが、それは作品の良し悪しとは無関係なことでもある。むしろさまざまな作品に光があたるようにならなければ、美術の存在は小さくなるばかりだ。それだけに上野の森大賞の存在は、重要なものになってくるのである。

 ところで、主催である上野の森美術館は、〈VOCA〉展の主催でもある。こちらは、主に学芸員に作品の推薦を募り、評論家が賞の審査をするという、いわばまさにコンクールの王道でもある。一見相反しそうな二つを主催する、という点も非常にユニークと言えよう。

 

Copyright (c) 2006 Art Village All rights reserved.