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new8.21 
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クリスト・アンド・ジャンヌ=クロード
『ザ・ゲート(門)、ニューヨーク、セントラル・パークのためのプロジェクト』

文●高石ゆみ Yumi Takaishi 美術ライター
(その2)
その1はこちら
<発表後とりかかった作業>

 まず、ゲートの部品製造する工場の選定が行われ、またニューヨーク市、クイーンズ地区に2500平方メートルという巨大な倉庫スペースを確保した。それと平行して、設置作業の責任者である、ヴィンス・ダヴェンポートがセントラル・パーク内を再調査し、設置場所の調整を行った。そして、4月からは鉄製ベース、アルミニウム製の接続部品、ビニール系樹脂製の支柱などの製造も順次始められていった。(支柱は12.7センチ四方のもので、リサイクル可能なビニール素材を使って抽出形成されるが、その総延長は105km.になる。垂直の支柱は、舗装された地面に置かれた1万5000基の細長い鉄製台座に固定されるが、その台座の重量は1基につき272kgある。公園の地面に穴を空けることはない。)

  また3月から4月にかけて、公園周辺の住民たちへの説明会が数回開かれた。その席上で出た多くの質問は、自然環境の保全に関するものだったという。これまでの彼らのプロジェクトと同様に、約2週間の展示期間中も、人々が普段通りに公園を利用でき、その後はもとどおりに撤去され、人にも動物にも自然物にも影響を及ぼさないよう最善の工夫がされることでクリアされている。実際、作品のために使われる空間は、公園を歩く人の平均的な頭の高さから、木の枝の一番低い高さまでというように。

<今までのプロジェクトの中での位置づけ>
  世界各地でプロジェクトを実現させてきたクリストたちだが、自分たちの住む街ニューヨークで行うプロジェクトは、実はこれが初めてのことで、そういう意味からも、彼ら自身にとっては特別な思い入れがあるようだ。
かかる費用は、20億円以上になる予定。コスト面から言うと、日米両国で同時に行われた『アンブレラ・プロジェクト』に次ぐものになると予想される。

<実行期間中の作業内容、社会に与える影響>

 しばしば誤解されることだが、ボランティアは募集しない。プロジェクトに関わることで派生した仕事には、いかなる場合でも報酬が支払われる。(それは、ワーキングビザ持っていなければ、働くことはできないということで、日本からの参加は、残念ながら難しそうだ。)かくして、『ザ・ゲート・プロジェクト』は、ニューヨーク市に住む何千人もの人々に雇用の機会を与えることになるとも言える。
作業に携わる人員の内容は、主に以下のとおり。
・ゲート本体の製造と組み立て
・その設置作業員
・24時間体制のメンテナンス・チーム(ユニフォーム着用、トランシーバー携帯)
・撤去作業員

現地以外の場所で、前もって行われるゲート本体の組み立てと、総計で10万1250平方メートルになる7500枚の布パネルの取り付けは地元の工場、工房で行われる。
公園現地での台座の設置は、少人数のチームで行われセントラル・パークの運営や維持、そしてニューヨーク市民の日常的な公園の使用に影響を与えることはない。
ゲートの設置作業は、何百人もの人力によって同時進行され、5日間で完了し、最終的な布の開花は、一日で終了する予定。

<契約内容>

  アーティスト側と、ニューヨーク市当局、公園、レクリエーション局との間で交わされた契約書で、アーティスト側には以下の項目を要求されている。
・ニューヨーク市、公園レクリエーション部、セントラル・パーク管理委員会などに対して、危害を加えないことを保証した、個人及び財産責任保険への加入。
・撤去に資金を供給することを約束する回復契約。
・公園レクリエーション部、セントラル・パーク管理委員会、ニューヨーク警察、ニューヨーク芸術委員会、史跡保存委員会、コミュニティとの全面的な協力。
・公園維持係、警察、緊急車両の園内への出入りなどの、日常的な利用に支障がないように十分なスペースを確保する。
・アーティストはこのプロジェクトに関連して発生する公園管理に関わるすべての費用を負担する。
・植物や岩などに影響を与えることがない。
・「ゲート」は、岩や木の根や、低い木の枝を避けて設置される。
・インスタレーションと撤去に際しては、小型の自動車だけが使用され、その通行は既存の遊歩道に限定される。・ニューヨークの人々は通常通り公園を使用できる。
・撤去後に公園・レクリエーション部が精査を完了する、同局は保証金を預かる。


<今後の活動・広報>

 クリストたちは、設置作業やモニター作業の参加者を募るため、引き続き今後も、ニューヨークを中心にレクチャーなどを積極的に行っていく予定だ。それにしても、2005年2月まで1年半を切ったわけだが、今後の最も深刻な課題は、この短い期間に、20億円を超えるかもしれない資金を調達しなければならないことかもしれない。当然ながら、ニューヨーク市当局も公園管理局も、費用を負担することは一切ない上、これまでの全てのプロジェクトと同様、いかなる種類の金銭的支援、物質的支援は受け付けない。
クリストとジャンヌ=クロードは、かかる費用の全てをアーティスト自身によって、作品を作り売ることでまかなう。そのため、CVJコーポレーション(ジャンヌ=クロード・ヤバシェフ社長)は、クリストの習作、プロジェクトの準備段階で描かれたドローイングやコラージュ、スケール・モデル、50年代、60年代の作品、オリジナル版画を売却し続けるのである。

          (完) 










ゲート(門)、セントラル・パークのためのプロジェクト』のドローイング (c)Christo















ゲート(門)、セントラル・パークのためのプロジェクト』のドローイング (c)Christo














ハーレム地区の自治会代表者への、プロジェクトの説明会


2002年6月、ゲートを設置する遊歩道の測量作業

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