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「ガチンコ審査! 
こども賞 VS おとな賞 in VOCA」



鑑賞者が審査員
(実施日:2003年3月21日)
文●ゴウ ヤスノリ   (ワークショップ・プランナー)
■VOCA展2003
現代美術の展望ー新しい平面の作家たち
3月14日〜30日
上野の森美術館
台東区上野公園1-2
03-3833-4191

■「審査」という切り口で主体的に作品鑑賞

 今年で10回目を迎えたVOCA展。多彩な平面作品によって構成され、毎年、出品作品の中から審査員によりVOCA賞とVOCA奨励賞が決定される。こうした展覧会の特性から、鑑賞者自らが審査員となり「審査」という切り口で主体的に作品鑑賞を行い、平面作品の様々な表現形態に触れてもらう機会を提示しようと試みたのが、今回行ったワークショップ、「ガチンコ審査! こども賞 VS おとな賞 in VOCA」である。

 昨年もVOCA展にて同様のワークショップを実施したが、この時は参加対象を小学生とした。一般に現代美術は難しいとは良くいわれることであるが、大人にも難しいのであれば、子どもにだって当然難しいはず。しかし、子どもたちは、固定観念に捕らわれることなく、自由な発想と豊かな感性で作品と向き合える鑑賞者でもある。そうした先入観の無い子どもの頃から、現代美術の世界に接してもらい、いわば免疫を付けてもらおうという狙いがあり対象を小学生に限定していた。しかし、今年は子どもたちの豊かな感性を大人たちにも同時体験して欲しいと考え、参加対象を大人にまで拡大し行った。

 今回の参加者は、子ども12名、大人9名。子どもと大人をそれぞれ3チームに分け、各チームにはスタッフサイドから大人のチーム・リーダを1名ずつ配置した。このリーダーにはチームのまとめ役と進行の補助を担ってもらった。チーム内での自己紹介の後、VOCA展に関する基礎クイズでコミュニケーションを図りリラックス。好きな作品を1点探し、賞名を考え、受賞シートにまとめ、最後は作品の前で発表してもらうという段取りのみを伝え、展覧会場へと出発。各チームの雰囲気に任せ、自由に鑑賞、審査してもらった。


 会場内では、気になった作品の前で互いに感想を言い合い、熱く語りあっている様子が子ども、大人両チーム共に見受けられた。ワークショップ開始1時間前から会場を訪れ、カタログを片手にメモを取り、念入りに下見をしている強者の大人審査員もおり、その成果を発表している気合いの入った方もいた。

■互いの作品観の違いを体感

 昨年同様今年も何人かの出品作家には事前に声掛けし、ワークショップ当日会場に来てもらい、参加者に対し作品解説や質問に答えて頂くことをお願いした。当日は4名ほどの作家の方が来場しており、参加者(特に子どもたち)の素朴で鋭い質問にタジタジになる場面もあった。来場してくれた作家の1人秋山さやかさんは、自作(地図に自分の行動の軌跡を糸で縫いつける作品)を前に、作品の素材である紙は自分ですき、紙と格闘しながら糸を縫いつけたというエピソードを話してくれた。それを聞き子どもチームのある男の子が、「じゃあ、紙のしわはガンバリの証拠だね!」と一言。思いも寄らぬ発言に秋山さんも「うれしい。胸がジーンと熱くなった」とぽつり。単なる紙のしわも、子どもには努力の跡と見え、その発言を聞いていたまわりの大人たちも「う〜ん」と大きく頷いていた。こうした作家とのやりとりも作品世界へ深く入り込むための道標となり、また作家にとっても新鮮な意見として心に響いたようだ。


 一方、中ザワヒデキさんの硬貨を彼の考えた法則性に従い張り付けた作品を見て、「こんなの誰でもできるから面白くない!」と大人顔負けの発言をする子ども審査員が登場。しかし、チームのリーダーが、「誰でもできることを一番初めにやった人ってすごいと思わない?」と合いの手を入れると、「そっか、すごいかも」とぐっと作品に近づき、その法則性を探る姿も見られた。

 こうした作家とのやりとりを交え、チーム内での意見交換や自分の世界にどっぷりつかり真剣に審査メモを取りながら約1時間程鑑賞し、各自受賞作品を絞り込み、受賞シートの作成に取り掛かった。受賞シートには、賞名、選定理由、作家名、作品名、そして作品から受けた印象を絵に描いてもらった。シート作成後は、子どもも大人も入り交じりながら再度展示会場にて賞名の発表を行った。

 今回は、各チームの中から1点賞名を選出し、子ども対大人で各チームがその賞名のみで該当作品を探し出すという「ガチンコ審査」ゲームも行った。賞名だけで該当作品を探し当てるのは至難のわざ、各チームなかなか作品が絞り込めず、苦戦を強いられた様子だった。解答の結果、全チームみごと不正解。しかし、なぜ該当作品と思ったのか理由を説明してもらうと、あながちその作品でも合っているのではと思われるものがほとんどで、言葉から先行して、作品を見ることの曖昧さを改めて考えさせられたゲームとなった。


 普段はなかなか作品について他人とあれこれ話し合う機会はそう多くはない。今回、賞の発表や作品を探し出すというゲームを通じ、大人も子どもの共に互いの作品に対する見方や感じ方の違いを体感でき、一人ひとりの鑑賞の幅がさらに広がったのではないだろうか。

(2003.4.3掲載)

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「ガチンコ審査! こども賞 VS おとな賞 in VOCA」審査結果
■こども審査員(12名)
(女子小3)
賞名:さばくショー
作家:福井篤
作品:ナーガのくび飾り
理由:わからない?

(小3男子)
賞名:しぶいで賞
作家:岩城直美
作品:View?Barn? 
理由:黒という色がびみょうに変化しているから。

(小3女子)
賞名:かわいい賞
作家:寄神くり
作品:途方のあるあした
理由:人げんなどがいっぱいあってとってもへやにあったらいいなっとおもったから。

(小3男子)
該当作品なし

(小3女子)
賞名:きれいな花の色賞
作家:井桁雅臣
作品:君と僕とあの光のこと
理由:きいろとオレンジ色がみんなきれいな色で形もよくできていてうまかったから。

(小4男子)
賞名:特にめずらしいで賞
作家:今井紀彰
作品:火と水の時代のしるし
理由:絵の色とバランスがとてもよかった。

(小4女子)
賞名:世界がふくらんだ賞
作家:井桁雅臣
作品:君と僕とあの光のこと
理由:パット見た時にふくらんだかんじがなんともいえずこの賞にしました。わたしは、この絵がとてもきにいりました。理由は色がとてもきれいでかなしい時にはげましてくれるようなきがしたからです。

(小4男子)
賞名:紙がリアルでよいで賞
作家:松野潤一
作品:解体あるいは解放
理由:紙が本当に目の前にあるようでリア?ルにしあげてあります。


(小5女子)
賞名:おじさまで賞
作家:田中功起/かつら
作品:THE WIG
理由:見てるとおもしろいことがおきるから。おじさまの気持ちがよくわかる。

(小6男子)
賞名:寄付しま賞
作家:中ザワヒデキ
作品:19235枚の硬貨から成る41193円(金額第二四番)
理由:こんな事に使わないよりユニセフにきふしたほうがいいと思う。

(小6女子)
賞名:まわるカツラ登場!?で賞
作家:田中功起/
作品:かつら/THE WIG
理由:かつらはまわっているし、いつかおちる!そこがおもしろかった。あのかつらが「何でまわってるのか?」「だれのだろう・・・。」いろいろ気になった。

(小6男子)
賞名:この世界に行きたいで賞
作家:米田昌功
作品:根之国絵図・隠世
理由:少し残酷な世界だけど不思議だから。


■おとな審査員(9名)
(男性)
賞名:気がつけばそれが作品で賞
作家:秋山さやか
作品:相模大野をあるく(その3)?2002年9月23日?12月7日
理由:生活と芸術が分別されていないところ。何でも作品にすることができるところ。

(女性)
賞名:光かがやく未来賞
作家:井桁雅臣
作品:君と僕とあの光のこと
理由:心の中の光にみえた。右にくらべ左の方がさらに希望と夢で光が強くなったように感じた。

(男性)
賞名:夢の中 花たちで賞
作家:小林浩
作品:花束 No.3
理由:夢の中で頭の中いっぱいに入りこんでくる花の様な生き物の様な!!

(女性)
賞名:存在の記憶(=記憶の腹)にとどまり続けることで賞
作家:岩城直美
作品:View?Barn? View?Red Roof?
理由:世界に投げこまれてしまった‘私’という存在のゆううつを思い起こさせてくれる。原風景がそこに描かれていると感じさせる懐かしさのようなものにひかれました。

(男性)
賞名:あなたは何を描きますか?賞
作家:松野潤一
作品:解体あるいは解放
理由:平面を描いていたから。

(女性)
賞名:気持ちよくなったで賞
作家:井崎聖子
作品:プルシャンのブーケ
理由:塗りかさねているのに、透明感があるところ。心が軽くなった気分がした。

(男性)
賞名:心がなごむでしょう
作家:小林浩
作品:花束 No.3
理由:あざやかそうで、あわく、空気に溶けてしまいそう。ひろがりを感じながらも、落ち着いた気持ちになるので・・・。

(女性)
賞名:色とりどり賞
作家:福井篤
作品:ナーガのくび飾り
理由:一番に目に映り、印象に残り、色々な色の山に見えたから。

(男性)
賞名:よくぞここでストップした賞
作家:大木裕之
作品:TAMA
理由:人間とは何かを考えさせられる。ここでストップしたのがスバラシイ。

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